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アルトリアグループ(MO)のクロノス・JUUL買収について

こんにちわ

 近年、米国のタバコ市場では、電子タバコが紙巻きタバコのシェアを大きく浸食しているという記事があったり、2019年1Qのアルトリアグループの決算でマルボロの販売数量が大幅に減少したりしています。

 このため、アルトリアグループは、電子タバコで最も勢いのあるJUULの株式の35%取得したり、カナダのマリファナ企業であるクロノスの株式を45%取得したり、脱紙巻きタバコを進めています。

 買収には多額の資金が必要なのは容易に想像できますが、その資金調達はどうやって行っているのか疑問に行い、調べた結果を記事として載せます。

 

買収金額

 まず、両社の買収金額から確認していきます。

  ①JUUL:12,800millionドル(約1兆4,000億円)

  ②クロノス:1,800millionドル(約2,000億円)

  合計:14,600millionドル(約1兆6,000億円)

 ちなみに、規模を把握するためにアルトリアグループの純利益を確認すると、2018年度で約7,000millionドルでした。2年分の利益です。

では、この資金をどうやって調達したか、確認していきます。

資金調達方法

 2019年1QのBSを見ると長期債務が27,024millionドルあり、 2017年12月と比較すると13,994millionドル増えています。買収金額に近いため、この増加額が買収資金に対する債務なのでしょう。ニュース等でも社債調達の記事がありましたし、まず間違いないでしょう。

 では、この債務の返済計画はどうなっているのでしょうか?

返済計画

 返済計画も2019年1Qのアニュアルレポートに記載がありました。要約すると、2022年-2031年間は少なくとも毎年1,000millionドル返済(約1,100億円)毎年返済する計画となっています。その後は10年おきに残りの債務を返済し、2059年に完済する計画だそうです。

 ちなみに、より長期がドル建てで、約10年完済でユーロ建てで借りられています。そしてドル建て債務が4-6%でユーロ建て債務が1-3%となっていました。結構、利率は高いですね。特にドル建て6%は同社の株式益回りと大きく変わらないですね。30年となると、資本コストは株式と変わらないというのは、考えれば当然ですが、新鮮でした。

返済資金の調達手段

  では、アルトリアグループがとりうる資金の返済方法について、検討します。

 一般的には、資金の調達方法は、①内部留保、②非現金支出費用(減価償却費等)、③資産売却、④他人債務、⑤増資の手段があります。ひとつづつ検討してきます。

内部留保

 まず、オーソドックスなのは、自分で稼いだ資金を留保した内部留保による債務の返済です。しかし、アルトリアグループは配当性向が80%となっており、残り20%で自社株買いを行っています。現在の資本政策では、債務返済資金を確保することは不可能です。このため、内部留保で返済する場合は、減配または配当性向を落とすか、自社株買いを止めるかという事になります。アルトリアグループは配当貴族であるため、連続増配記録を止める事はないと思います。現実的には債務返済開始が2022年となっているので、その間に利益を増やし、一方で配当性向・自社株買いを調整していく政策が妥当だと思いますし、そう考えているのではないかと思います。

②非現金支出費用

 アルトリアグループの償却費は微々たる金額です。このため、あてにはなりません。

③資産売却

 資産売却もありうる選択肢だと、考えます。アルトリアグループは、本業のタバコ以外の事業であるアンハイザー・ブッシュ・インベブを10%保有しています。これを全て売却すると、長期借入・社債金額の70%を返済できます。

 しかし、アンハイザー・ブッシュ・インベブの売却を行うと、投資収益が無くなり、純利益が10%もなくなります。減収分は株主還元の減少として何かしらの形で現れます。おそらく、増収率の減少または自社株買いの減少でしょうか。

④他人債務

 これは、2022年までに増益・資本政策の調整が間に合わず、しかし実現可能な計画がある場合、時間を確保するという意味で行われる手段だと思います。

⑤増資

 増資が行われると、株主価値の希薄化となり、最も避けてたいと考えているはずです。仮に行われると、増配率の著しい減少または減配・自社株買いのストップとなり、株価の暴落は避けられないと思います。

債務返済方法の結論

 以下のような順序で対応しようと当社の幹部は考えているのではないでしょうか。

  シナリオ①:増益が達成され、増益で足りない分のみ、自社株買いの減少で調整。

  シナリオ②:増益が達成さたが自社株買い減少だけでは資金が確保できず、一時的な配当性向減少(増配率減少)で補う。

  シナリオ③:増益が達成さたが自社株買い減少だけでは資金が確保できず、アンハイザー・ブッシュ・インベブの売却で補う。

  シナリオ④:Juulがこけて、紙巻きタバコもこける。このため、アンハイザー・ブッシュ・インベブの売却、減配、増資の順で実施

 自分なりの投資判断の基準を作るうえで、上記シナリオを踏まえ、どのような資本政策がとられるか見守る必要がありますね。

 

結論

  今回の買収は、電子タバコの台頭による紙巻きタバコ離れ、FDAの加熱式タバコの承認遅れなど、技術革新と市場の逆風に対する対応ですし、必要な事だと思います。しかし、将来の債務返済はありますので、収益は維持されているに留まる可能性があります。このため、最小の被害で株主還元は債務返済額だけ減少します。

 ただ、アルトリアグループの対応が上手くいっているのに、株価低迷し続けていると、シーゲル教授が説明していた今までパターン通りが通用するかもしれません。ただ、むやみやたらに積み立て投資を行うと危険なので、単年度だけの決算で判断せず、複数年かけて実行されるストーリーを自分なりに理解し、現状の会社の状態を把握することが重要だと感じます。

 そう考えると、結論は、やっぱり株式投資は面白いですね。